ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス、NVIDIA Maximusを活用し、『メン・イン・ブラック3』の煙をVFXで制作

 
 
メン・イン・ブラック3
メン・イン・ブラック3
メン・イン・ブラック3

ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス(SPI)では、以前から、NVIDIA® Quadro®プロフェッショナルGPUを活用した技術的イノベーションにより、『くもりときどきミートボール』から『アリス・イン・ワンダーランド』そして『スパイダーマン』シリーズにいたる映画の特殊効果を制作してきました。そして最新作、『メン・イン・ブラック3』(MIB3)でも、NVIDIAのテクノロジを活用して劇的なスピードアップと特殊効果ワークフローの効率アップを実現したのです。

『MIB3』で大きな役割を果たしているのが煙の特殊効果で、フロリダ州ケープカナベラルからロケットを打ち上げるシーンなど、SPI が制作した600ショットあまりの特殊効果のほとんどすべてに煙の特殊効果が利用されています。コンピューターで煙を生成するのはとても大変な処理であり、高価で貴重なコンピューター処理能力をめいっぱい使って複雑なシミュレーションを行う必要があります。SPIで特殊効果のスーパーバイザーをしているテオ・ヴァンダヌートは、Side Effects社のHoudiniソフトウェアもNVIDIA GPUも長年使ってきた経験があります。その彼によると、NVIDIA Maximus™搭載のワークステーションでHoudini 12(GPU最適化の改善を行ったもの) を走らせたところ、シミュレーション速度を10倍と劇的にスピードアップできた上、いままでよりも優れた煙を『MIB3』で実現することができたといいます。

Maximusによるマルチタスク

ヴァンダヌートがNVIDIA Maximusワークステーションを使い始めたころ、Side Effects Software社からHoudini 12がリリースされました。Houdini 12にはナビエ・ストークスの方程式を基礎とした煙ソルバー、Pyro FX2が搭載されていますが、これはGPUで高速化された新しいバージョンです。

NVIDIA Maximus搭載ワークステーションは、1台のワークステーションでNVIDIA Quadro GPUが持つビジュアル化機能やインタラクティブなデザインの能力とNVIDIA Tesla® GPUが持つハイパフォーマンスコンピューティング能力の両方を活用できます。フォトリアリスティックなレンダリングやシミュレーション計算など、大量の計算が必要な部分は、コンパニオンプロセッサであるTeslaが自動的に受けもってくれるのです。この結果、CPUリソースが解放され、I/Oやオペレーティングシステム関連の処理、マルチタスクなど、CPUが得意とする作業に余裕をもってあたれるようになります。一方、Quadro GPUは、システム上でリッチなインタラクティブ操作をフルパフォーマンスで行うことが可能になります。

ヴァンダヌートは次のように述べています。「QuadroカードとTeslaカードがある場合、シミュレーションに必要な処理はすべてTeslaカードに任せることができます。その結果、シミュレーションを行いながら、同じワークステーションで他のタスクを処理できるようになります。Houdiniで他のプロジェクトを動かしてもいいし、コンポジティングを行ってもいい、あるいは、ライティングアプリケーションを実行してもいいのです。Teslaカードを追加するというのは、シミュレーションのみを実行してくれる専用処理ユニットを持つということです。」

作業を継続可能

Maximusシステムを使ったシミュレーションでMIB3における煙を生成するのはとても効率がよいこと、また制作パイプラインへ簡単に組み込めることがわかったので、SPIでは、この映画用として、Maximus搭載のワークステーションを10台用意しました。このワークステーションにより、Side Effects Software社のHoudini 12やAutodesk Maya、レンダリングのArnold、それにSPIがライティングに使用しているKatana(The Foundry社が一般に販売中) など、ツールパイプラインをサポートしたのです。

ヴァンダヌートは次のようにも述べています。「特殊効果ワークフローにシミュレーションを組み込む際に難しい問題として、精神的なターンアラウンド時間があります。暗闇のなかで絵を描くような感じになるのです。バーチャルなブラシを何回か動かしたあと、3時間もたつと、どういう動かし方をしたのか覚えていないこともあるわけです。Maximusシステムを導入する前は、シミュレーションをレンダーキューに送ったあと、長い時間待たされていました。こういうやり方では、クリエイティブな思考が途切れてしまいます。」

「これに対して今回の制作では、『そうか、このノブをいじるとこういう結果が得られるんだ』と思えるくらいさっとシミュレーション結果を得ることが可能で、こういうレベルのフィードバックがさっと得られました。そのおかげで、いままでは避けられなかった、膨大な処理時間にマンパワーなど、貴重な資源を食いつぶす失敗を今回は避けることができました。」

ヴァンダヌートによると、いままでのシミュレーションは目隠しをして飛ぶようなものだったそうです。いままでは運を天に任せて10種類ものシミュレーションを行い、それぞれについてレンダリングをして精密な描写を出力し、待ち行列のプロセッササイクルを大量に浪費していたわけですが、Maximusを導入するとターンアラウンド時間が大幅に短縮されるとともに、最終レンダーによる描写精度も向上するのです。

すばやい反復と細かな描写

MaximusシステムでHoudini 12を走らせるようにした結果、SPIのアーティストは、ボクセルデータや速度フィールドを細かくコントロールできるようになり、レンダーの時間をいろいろといじらなくても、煙の様子をプレビューシミュレーションへ詳細に焼き込めるようになりました。

これがどれほどの効果を発揮するのか、ロケット発射のシーンにおける煙の流れ方をシミュレーションしたときの様子を見ればよくわかります。ヴァンダヌートは次のように述べています。「プロダクションサービス部門から異動してきたアーティストがいました。彼はVFXツールを使った経験があまりなかったのですが、それでもすぐに作業をはじめ、ロケットから煙が22メートルも吹き出しているシーンの制作を行うことができました。また、このシーンは、美しい流れになるように流体シミュレーションを行う必要があり、何十回も作り直しました。どれもすばらしい出来栄えでしたが、細かいところまでディレクターがこだわったからです。MaximusとHoudini 12がなければ、割り当てられた時間のなかであれほど大量のシミュレーションを行うことはとてもできませんでした。」

「生産性がこれほど急激に上がるとディスクがすぐに満杯になってしまうのだけが問題ですね」とヴァンダヌートは笑います。「このワークフローではあまりにすばやく作業のやり直しができるので、使う予定のないシミュレーションを取りのぞく時間がなかったりするのです。なにしろ、どれもとてもいい感じにできているものですから。GPU最適化で能力を高めた結果、毎日、何テラバイト分もの煙シミュレーションを生成してしまい、ふと気づくとその他の設備を圧倒している状況になってしまったのです。」

未来を見据えて

今回の映画における活用は、Houdini 12とNVIDIA Maximusによる可能性のごく一部にすぎません。今後は、パイプラインをさらに最適化して映画制作に活用できるものと思われます。「今回、我々の煙パイプラインでは、グリッドベースのシミュレーションをGPUに最適化し、驚くほど高速なマルチスレッド実行を実現することができました。 HoudiniにはGPUで高速化されたツールがほかにも搭載されていますから、今後は、そのようなツールや我々のライティングパッケージも利用したいと考えています」と、ヴァンダヌートは述べています。

SPIでは、今後、『オズの魔法使』の前日譚にあたる『オズ:ザ・グレート・アンド・パワフル』などの制作を行ってゆく予定であり、そちらにも、特殊効果用のこの煙パイプラインを活用してゆくとしています。

「いま進めているのが、レンダーをGPU対応キューに送ることです。ローカルマシンのシミュレーションで経験したほどのスピードアップをワークフローのレンダリング側でも実現できたらすごいことになると思います。」とヴァンダヌートは締めくくりました。

『メン・イン・ブラック3』は5月25日に公開され、封切り週末の興行収入が2億ドル以上という大ヒットになりました。