NVIDIA Quadro ケーススタディ:「エアベンダー」

 
 
Industrial Light、MagicとNVIDIA Quadro
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画像提供:パラマウント・ピクチャーズ・コーポレーション

インダストリアル・ライト&マジック(ILM)は、ルーカスフィルム社に所有されているプロダクション会社で、1975年設立以来、類ない撮影後の編集ビジュアルエフェクト作業を提供し続けてきました。 ILMが手がけた映画、コマーシャル、映画の予告編、ミュージックビデオや特別イベントは、モデルメイキング、マットペインティング、コンピュータ生成画像やデジタルアニメーションの技術、そしてビジュアルエフェクトのプロダクションで求められるあらゆるプロセスにおいて、ILM の芸術性をフルに活用した傑作品と言えます。ILMにより、デジタル画像制作に必要とされる画期的なソフトウエアが開発され、業界で広く使われ、また他の会社やソフトウエアメーカーに採用されるようになったのです。ILMは、定期的に最も高く評価されている映画制作会社たちと話しながら、実現可能なビジュアルエフェクトの実証をしてきました。そして、オスカーのベスト視覚効果賞を15回、映画芸術科学アカデミーの技術賞を23回受賞しています。

ILM の最新作品は、2010年7月公開のM.ナイト・シャマラン監督最新作、パラマウント・ピクチャーズの「エアベンダー」で、485のビジュアルエフェクトショットを作成しました。この映画は、登場人物が自然界の力―火、気、水、土を操り、またこれらの4つのエレメントを武器として扱うドラマティックな構成となっています。巨大な火の玉、土の壁、巻きひげのような水、強風などは、ILMによるデジタルシミュレーションのいくつかに過ぎません。

火や水のような流体シミュレーションの創造は一般的に非常に複雑とされており、高度な専門知識を持ったビジュアルエフェクトアーティスト、もしくはアルゴリズムと流体解析を熟知したスーパーバイザーが必要となりました。更に、従来のCPUベースのレンダーファームでは、ビジュアルエフェクトの反復作業に時間がかかってしまい、映画制作において時間を拘束される中、独創性を制限してしまう事が課題となったのです。

ILMのビジュアルエフェクトのベテランアーティストたちは、「エアベンダー」のビジュアルエフェクトシミュレーション制作にあたり、柔軟性を求め、また簡単で時間を節約できる作業を望みました。そうする事により、制作時間内で、映画監督に選択幅の広いビジュアルエフェクト反復を提供できると考えたからです。

「エアベンダー」制作において、スピードが要求されるワークフローとあらゆる場面の反復を実現する為、ILM はPlume という独自のツールを開発しました。Plume は流体シミュレーションシステムで、NVIDIA CUDA™ パラレルコンピューティングアーキテクチャ上で作動するGPU ベースのレンダラーです。ILMは、NVIDIA Quadro FX 5800プロフェッショナルグラフィックスカードを登載する12台のGPUベースレンダーファーム上で、シミュレーションレンダーを実行するPlumeを使用し、劇的に作業の高速化を実現しました。

ILM のNVIDIA CUDA ベースのソフトウエアPlume は、NVIDIA Quadro GPU上でのファイナルフレーム・レンダリングを可能にしたのです。Plume は当初、流体シミュレーションのレンダリング用に構築されたのですが、気体の動き、海上の霧、雲の動きなどもCG によって作り出せるほど柔軟である事が証明されたのです。「エアベンダー」制作時に、より大きなチャレンジとなったショットがありました。それは、ノア・リンガー演じる主人公アンが、炎と砂粒を押しやってしまうほどの激しい突風に巻き上げられる火を撃退するシーンでした。このショットは、空気の動きと火、そして相互が交じり合った動きについて、慎重な指示のもと、2つのPlumeシミュレーションによって完成しました。

開発プロセスが、より簡単であった為、ILM はOpen GL ではなくNVIDIA CUDA を使い、GPU アクセラレートの流体解析を実行する事にしました。「CUDAを使ってのコード化は非常に簡単です。Plumeの開発は、基本的に、映画制作者側の表現を実現する為の視覚マシンを構築する事を意味しました。とはいっても、普通のタスクではありませんでしたが。CUDAでのコード化は、作業を速くし柔軟性を与えてくれるだけでなく、Open GLでコード化した時よりも、コードのライン数が少なくて済むのです。」と、 ILMの研究開発エンジニアであるオリビア・マウリ氏は語っています。

「エアベンダー」制作で使用したILMの主要ツールセットは、mental ray、レンダリング用にPixarの Renderman、アニメーション用にAutodeskのMaya、合成用にThe Foundryの Nuke、CG とエフェクト作成用にILMのツールZenoとSaberで成っていました。

ILMは、ただ単により複雑なビジュアルエフェクトを速く簡単に作り出す事だけでなく、「エアベンダー」制作で実現したように、映画制作の現場で実際にNVIDIA CUDAとQuadroプロフェッショナルGPUの能力を最大限に活用し、将来のチャンスを見出す事ができたのです。

「NVIDIA GPUによってPlumeの性能がアップする為、大変インタラクティブで、アーティストの技術的知識よりも目に頼る事ができるツールを与えてくれます。基本的なアルゴリズムや流体解析の知識を持っていなくても、精密なシミュレーションが可能です。」と、ILMのアソシエイトビジュアルエフェクト・スーパーバイザーであるクレッグ・ハマック氏は語っています。

「あらゆる事に関してそうですが、ハイエンドなビジュアルエフェクトには反復は欠かせません。」と、マウリ氏は付け加え、更に続けます。「アーティストにとって、自作のショットの動きをコントロールする事は、極めて重要です。そして、監督のビジョンを演出し、世に使える事に価値あるのです。NVIDIA GPUベースのフレームワークで作業する事によって、我々は複雑な火、塵、気体のシミュレーションを日に最高8回の反復を見れました。これは、非常に重要で、CPUベースのシミュレーションではレンダリングにひと晩かかり、反復は一日でたったの一回だったところが、10-15倍のスピードでレンダリングが可能になったのです。」

ハマック氏は、更に次の様に付け加えています。「写実的な火は、CGで作成するに最も大きなチャレンジのひとつでした。私自身は、『エアベンダー』制作パイプラインにとって、GPUベースの流体解析は欠かせない最高の技術的進歩であったと思います。写真の様に本物に見えるCGの火を多くの場面用に作り出す事は、最初不安でした。それだけではなく、登場人物の武器として使用された火をコントロールする事も課題でした。その不安を解消すべく、Plumeは大きな技術の進歩であり、アーティストが技術的ではなく独創的にショットを考える事ができるよう、反復作業の簡略化を実現しました。」

「CUDAとNVIDIA GPUへのアクセスは、複雑なビジュアルエフェクトのチャレンジに立ち向かう術を大きく変えてくれました。そして将来、GPUコアを使って、作業時間を短縮する為、今後もCUDAを活用していきたいと思っています。」と、マウリ氏は話を結びました。

ILMは、今後のプロジェクトパイプライン用に、更にNVIDIA CUDAベースのツールを組み込む予定です。そして、ビジュアルエフェクトのワークフローにQuadro GPUアクセラレートレンダリングを活用する為の新しい方法を探究し続けて行くのです。