NVIDIA、ウェタ・デジタルと協力して『アバター』における特殊効果の制作をスピードアップ

 
 
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『アバター』の特殊効果を制作したウェタ・デジタル社-ケース・スタディー/サクセス・ストーリー

課題:


ジェームス・キャメロン監督と20世紀フォックス映画が提供する画期的な立体3D映画、『アバター』が、2009年12月18日、ついに公開されました。『アバター』は7700万ドルと3D映画最高の封切り後週末興行収入となったほか、現在までの累積興行収入が世界全体で10億ドルを突破するという記録的な成績をあげています。この映画の特徴はきめ細かく描かれたシーンが多いこと、また、数多くのバーチャル・キャラクターがコンピュータ・グラフィックス(CG)環境に登場することです。

今回、『アバター』の特殊効果制作を担当したのは、ウェリントン(ニュージーランド)のウェタ・デジタル社です。ウェタ・デジタル社は昔からのNVIDIA®ユーザーであり、特殊効果(VFX)のプロダクション・パイプラインにQuadro®プロフェッショナル・グラフィックス・ソリューションとTesla™ハイパフォーマンスコンピューティング・ソリューションを採用しています。

細部まで作り込まれたデジタル背景で800ものCGキャラクターを動かしてシーンを構成すること-それがウェタ・デジタル社の仕事でした。この作業には、かつてないほどの処理能力が必要になります。そう考えたウェタ・デジタル社は、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)を発明したNVIDIAの協力をあおぐことにしました。

ウェタ・デジタル社で研究開発を統括するセバスチャン・シルワン(Sebastian Sylwan)氏は、次のように述べています。「『アバター』ではとても複雑なシーンを構築しなければならないため、レンダリングのアプローチ自体を見直すことにしました。最終的な仕上げのパスではRenderManによるレンダリングを行うのですが、『アバター』の巨大なデータ・セットに対してくり返し行う仕上げ処理を最適化するため、かなりの計算量をプレコンピュテーション・ステップで処理することにしました。そう考えると、我々が直面していた課題はレンダリングというよりもむしろハイパフォーマンスコンピューティングに属するものであり、NVIDIAなら、GPUの超並列パワーを活用して問題を解くことが得意だと気づいたわけです。」

2009年3月、ウェタ・デジタル社が直面する課題を解決するため、ウェタのレンダリング研究者、ルーカ・ファシオーネ(Luca Fascione)、ウェタCTO、ポール・リャン(Paul Ryan)、そして、NVIDIAリサーチのシニア・アーキテクト、ヤコポ・パンタレオーニ(Jacopo Pantaleoni)が集まって相談をしました。この会議について、パンタレオーニは次のように述べています。「CGによる特殊効果で使うポリゴンの数は今まで百万単位でしたが、今回は初めて十億単位になるとの話がポールからありました。ルーカからは、ライティングに採用したいと考えているユニークなアプローチの説明がありました。驚くほど複雑な世界を構築しようとしており、その全体について光をトレーシングするためにはスケーラブルなソリューションが必要とされていました。」

ソリューション:


ウェタの研究開発部門とNVIDIAリサーチの共同研究が始まりました。パンタレオーニはニュージーランドに数ヶ月も長期出張し、複雑な『アバター』のビジュアル・シーケンスで使われる数十億ものポリゴンが処理できるレイトレーシング・ソリューションの開発に取り組みました。

この共同研究により、NVIDIAとウェタは、ハイパフォーマンスコンピューティングのパワーをウェタのVFXパイプラインに流し込むプレコンピュテーション・エンジン、PantaRayを開発しました。PantaRayとは、ギリシアの格言、「panta rhei (万物は流転する)」をもじった名前です。PantaRayはパワフルなレイトレーシング・システムで、ウェタがレンダリング・パイプラインで使用するシーン・オクルージョン情報のプレコンピュテーションを行います。この情報があれば、イメージ・ベースのライティングを動的にすばやく再計算できるのです。

この画期的なアプローチを採用した結果、ウェタでは、複雑なシーンを従来よりも短時間かつ少ないメモリと少ないプロセッサ数で処理できるようになりました。こうしてアーティストが短い時間で何回もくり返し処理を行い、フォトリアリスティックで品質の高い結果が得られるようになったのです。NVIDIAとの共同開発の結果、ウェタは、今まで時間の面からもコストの面からも不可能であったレベルのシーンが作れるようになりました。

NVIDIAリサーチのパンタレオーニと共同開発したソリューションがすばらしかったことから、ウェタは、超並列コンピューティングを可能にするNVIDIAテクノロジー、GPUコンピューティングの導入をさらに進めることにしました。こうして、ウェタのPantaRayエンジンをNVIDIAがCUDAベースにポーティングし、GPUで駆動できるようにしたところ、GPUベースのサーバ、NVIDIA Tesla® S1070を使用するとCPUベースのサーバの25倍もの実行速度が得られるようになりました。

効果:


PantaRay導入のメリットは、『アバター』のトレーラーを見ればわかります。圧巻は、びっしりと木が生えた山を背景に、パープルの生き物が何百も水の上を飛んでいるところをヘリコプターで上から見たショットです。PantaRayによるこのショットのプレコンピュテーションは、わずか1日半しか要しませんでした。これはすばらしいことだとファシオーネ氏は語ります。「今までのやり方なら、1週間はかかったはずです。それがPantaRayではこれほど短時間で終わるのです。これは、さらに美しいショットに仕上げる時間が得られることを意味します。このシーンをご覧になれば、茂みや葉、一つひとつが細かく描き込まれていることがわかるはずです。距離による色の違いもはっきり、きれいに表現されています。これも、高い処理能力を持つPantaRayだから実現できたことです。」

しかも、GPUならCPU上の25倍という高速でPantaRayによるレイトレーシング処理が行えます。ウェタ・デジタル社で研究開発を統括するセバスチャン・シルワン(Sebastian Sylwan)氏は、次のように述べています。「これほど複雑な処理を従来の方法で行った場合と比較すれば、おそらく、スピードは100倍近くまで上がっていたと思われます。」

ウェタ・デジタル社では、スティーヴン・スピルバーグとピーター・ジャクソンが監督する映画、『タンタン』の制作においても、PantaRayとNVIDIA Tesla GPUを特殊効果パイプラインに組み込む予定です。また、PantaRayとGPUを活用してパイプラインのスピードアップを実現するさまざまな方法も検討してゆくとしています。

ウェタ・デジタル社のシェーディング部門を統括するマーチン・ヒル(Martin Hill)氏は、次のように述べています。「プロジェクトは新しくなるたびに複雑さが増してゆくものなので、レンダリング量も膨れあがる一方です。レンダリングが複雑になればシーンにおける光の処理も難しくなります。複雑なシーンのライティングをシンプルなシーン並みにやりやすくする技術、それがPantaRayなのです。」

NVIDIAのデジタル・フィルム・テクノロジー担当マネージャー、ドミニク・スピーナ(Dominick Spina)は、次のように述べています。「ウェタ・デジタル社の研究開発チームのようなグループと共同開発を行う場合、プロダクション技術の限界ぎりぎりが要求されます。『アバター』に関してウェタと行ったコラボレーションは驚異的なものでした。PantaRayの中に、概念レベルで開発した部分はありません。すべてプロダクションの要求に応えるものだったのです。NVIDIAは今後も、特殊効果やアニメーションの制作を行うトップクラスの会社と緊密に協力することにより、プロダクション技術に関する複雑な課題を我々のノウハウで解決し、高次元の仕事をアーティストができる環境を作りたいと考えています。」